アイヌ語を探究する

危機言語・少数言語の記述と記録

岸本   宜久 講師
Kishimoto   Yoshihisa
博士 (文学)
経済経営学部 経営学科

言語学の立場からアイヌ語の研究をしています。とくに、鵡川地方でのアイヌ語のフィールドワークを通じて、言語・文化の記述(危機言語ドキュメンテーション)を行っています。また、地域の危機言語という観点から、日本語北海道方言や日本手話(とりわけ、北海道手話)についても関心をもって調査・記録に取り組んでいます。

キーワード
  • 言語学
  • アイヌ語
  • 危機言語
  • 少数言語
  • 北海道方言
  • 日本手話

シーズ(研究)紹介

 北海道むかわ町をフィールドに、アイヌ語の継承語話者(家庭などで自然にアイヌ語を獲得した話者)への言語調査を行ってきました。ここでは調査の様子を少しご紹介したいと思います。むかわ町には鵡川という大きな川が流れていて、その河口はシシャモがとれることで有名です。鵡川でのアイヌ語調査においても、シシャモ(susam)に関するさまざまなお話をうかがうことができました。まさにこの土地ならではの言語的、文化的な情報として貴重です。

図1

図1. シシャモで有名な鵡川の河口域

 主な調査協力者は、むかわ町のご出身でアイヌ語の継承語話者である吉村冬子さん(大正15年生まれ)です。「ひと言葉でも多くききなさい」という継承への強いお気持ちをもって調査に臨まれ、数えきれないほどの語彙や談話、文法的な判断についてお教えいただきました。

図2

図2. アイヌ語の調査風景

もちろん、言語に関すること以外にも、経験に基づく豊かな文化的・歴史的知識を数多く教えていただきました。

図3

図3. tar(背負い紐)の使い方を実演する調査協力者

図4

図4. itese(ござ編み)をする調査協力者

調査で得られた貴重な言語・文化的な情報は、アイヌ語の言語研究への活用のみならず、地域での継承に役立てていただけるよう、公開に向けたデータの整理にも取り組んでいきたいと思います。

この場を借りてあらためて、吉村冬子さんとご家族の皆さま、お世話になった皆さまに深く感謝申し上げます。

実績と今後の活動予定

2017年~2018年 公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構 口承文芸視聴覚資料作成事業編集委員会委員
2020年~2024年 日本学術振興会科学研究費助成事業:若手研究「アイヌ語鵡川方言のフィールド調査およびデータの公開」

地域や産業界、自治体に向けて

2012年以降、北海道の鵡川地域で継続的なアイヌ語のフィールドワーク(言語調査)をおこなってきました。調査を通じて得られたアイヌ語・アイヌ文化に関する貴重なフィールドデータは、学術研究のみならず、地域やコミュニティにおけるアイヌ語・アイヌ文化の継承や学習においても利活用されるよう、公開にむけて取り組んでいます。
関連情報
関連サイト
岸本研究室サイト
教員教育研究業績
https://researchmap.jp/ksmtyshs